レコード盤のような円盤が、軒先でくるくると回りながら、風鈴のような澄んだ音を響かせる。見た目は音楽の道具、鳴るのは涼の道具という、二つの文化がひとつの形に重なったような工芸品がある。
京都の工房では、清水焼をはじめとした陶器や、吹きガラスの技法を使って、こうした「音を鳴らす円盤」を一点ずつ手がける作り手が存在する。溝の代わりに文様を刻んだ盤面、風を受けて回転する軸、揺れるたびに触れ合って音を出す舌(ぜつ)と呼ばれる部品。伝統的な風鈴の構造を土台にしながら、見た目だけレコードに寄せているわけではなく、盤の厚みや文様の彫り方そのものが音色に関わっている。

回転する円盤という発想
レコードは針が溝をなぞって音楽を再生する道具、風鈴は風が舌を揺らして音を鳴らす道具。「回る」「音が鳴る」という2つの共通点だけを残して形を重ねたのが、この手の工芸品の面白さだ。
- 陶器の場合、素地の厚みや焼成温度によって音の伸び方(残響)が変わる
- ガラスの場合、薄く吹くほど高く澄んだ音になりやすいが、その分割れやすくなる
- 盤面の文様は装飾であると同時に、風を受ける面積を左右し回転のしやすさにも関わる
一枚ずつ手作業で作られるため、同じ工房の同じシリーズでも音色にわずかな違いが出る。量産品の風鈴にはない「この一枚だけの音」を求めて、あえて作家ものを選ぶ人も多い。
京都という土地との相性
清水焼、京友禅、京漆器──京都の工芸は「日用品を美術品の水準まで磨き上げる」ことを得意にしてきた。風鈴もその例外ではない。
京都には古くから、夏の暑さをしのぐための道具に美意識を重ねてきた歴史がある。エアコンが無かった時代、風鈴の音は視覚的な涼しさを演出する装置でもあった。レコード型の風鈴は、その延長線上にありながら、令和のインテリアとしても違和感なく馴染むよう、モチーフを大胆に更新した一例と言える。
軒先に吊るす代わりに、リビングやワークスペースの窓辺に置くという楽しみ方をする人も増えている。風が抜けるたびに鳴る澄んだ音は、香りで一息つくヤードムの使い方と同じように、忙しない時間の中にふと立ち止まる瞬間を作ってくれる。
一点物の工芸品として選ぶなら、工房ごとの音色の違いを実際に聞き比べてから選びたい。値段の張るものも多いジャンルだが、それだけの手間と時間が一枚の盤に詰まっている。




