執筆: Jin Fujisaki / 公開: 2026-02-19
これまで「Mu-so」といえばNaim Audioのブランドでしたが、この「Hekkla」は違います。 筐体のフロントグリルを外した瞬間、オーディオマニアなら息を呑むでしょう。 Focalのハイエンドスピーカー「Utopia」シリーズでお馴染みの、「ピュア・ベリリウム・インバーテッド・ドーム・ツイーター」が鎮座しているのです。
これは単なるコラボモデルではありません。 Naimの強力なアンプ技術(450W)に、Focalが誇る世界最高峰のドライバーユニットを移植した、禁断のキメラ(合成獣)です。 高音の伸びやかさ、解像度は、従来のワイヤレススピーカーの次元を遥かに超えています。 バイオリンの倍音、女性ボーカルのブレス。 空気の震えまでもが、ワイヤレスで再生される。 「一体型で、ピュアオーディオの音がする」。 その矛盾を、技術力でねじ伏せた傑作です。
| 溶岩と氷。アイスランドの自然を模した「Hekkla」デザイン

image House Of Stereo
モデル名「Hekkla(ヘクラ)」は、アイスランドの火山に由来します。 その名の通り、デザインは「静と動」のコントラストで構成されています。 筐体トップには、本物の溶岩石(ラバストーン)を加工したタッチパネルを採用。 ひんやりとした石の感触と、指でなぞると浮かび上がるLEDのインジケーターは、まるでマグマの脈動のようです。
サイドパネルには、Focalが得意とする木材加工技術が生かされた「スモークド・オーク」を使用。 有機的な曲線を描くヒートシンク(放熱板)は、機能美の極致です。 ただの四角い箱ではありません。 消灯していても、そこに置いてあるだけで部屋の格調を高める「現代アート」としての存在感を放っています。
| HDMI 2.1対応。テレビの音を「ハイエンド」に変える
image Trusted Reviews
このスピーカーの主戦場は、実はリビングのテレビ前です。 最新のHDMI eARC(2.1)端子を搭載しており、テレビとケーブル一本で連動します。 安っぽいサウンドバーとは訳が違います。
Focal独自の中低音ドライバー「Wサンドウィッチコーン」が、サブウーファーなしでも重厚でタイトな低音を叩き出します。 映画のセリフは驚くほどクリアに、爆発音は床を揺らすほどパワフルに。 「Netflixを見る」という行為が、これ一台で「映画館体験」にアップグレードされます。 もちろん、Dolby Atmosのバーチャル再生にも対応しており、音に包まれる感覚も味わえます。
| Naimアプリの完成度。あらゆる音楽がここに集まる
image Naim Audio
ハードウェアはFocalですが、ソフトウェアは定評のあるNaimのプラットフォームが動いています。 Spotify Connect、Tidal、Qobuz、Apple AirPlay 2、Chromecast。 あらゆるストリーミングサービスが、最高音質でネイティブ再生可能です。
専用アプリの操作性は極めてスムーズ。 マルチルーム機能を使えば、別室にあるNaim Uniti Atomや、他のMu-soシリーズと完全に同期して音楽を流すこともできます。 「スマホで選曲し、石のダイヤルで音量を上げる」。 この物理的な操作の快感が、音楽を聴く喜びを思い出させてくれます。
| まとめ:50万円の価値がある「一生モノ」の家具
image What Hi-Fi
価格は約45万円〜50万円。 オールインワン・スピーカーとしては破格の高値ですが、FocalのスピーカーとNaimのアンプを別々に揃えれば100万円は下りません。 そう考えれば、この「Hekkla」はバーゲンセールと言えます。
Focal Mu-So Hekklaは、複雑なオーディオ機器の配線やセッティングからあなたを解放し、純粋な「音」と「美」だけを提供します。 リビングのソファに座り、ワイングラスを傾けながら、ベリリウムが奏でる至高の音楽に浸る。 そんな贅沢な時間を買うための、最良の投資です。



